☆ 第 9 回JMO夏季セミナーの記録 ☆

第 9 回JMO夏季セミナーは, 2009 年 8 月 23 日(日)〜 29 日(土)の 6 泊 7 日で, ヴィラ千ヶ滝(山梨県清里高原)で開催しました. 参加希望者には事前に, 自分が数学に関して研究したもの, 興味をもったことについてのレポートを送っ てもらい, それによって選抜を行いました(2009年度春の合宿参加者は優先的に参 加することができました. 選抜方式は年によって変わります). 参加した生徒は男子31名, 女子4名の計35 名で, 中学2年生から高校3年生までにわたる幅広い層からの参加が見られました. また, チューターとして17名の大学生・大学院生も参加しました. 当セミナーは 数学オリンピック財団の主催で運営されています.

概 要

午前中に講義(第 2,3,5 日), 午後・夕食後にゼミを行いました. 5日目の夜に は, 親睦を深めるためバーベキューを行いました. また, 1日目の夜には希望者による自由発表があり, 1名の生徒が自分の数学に関 する研究成果について発表してくれました.

ゼミではいくつかのグループに分かれて, それぞれ下記のうち1冊の本を読みす すめました. 最終日にはセミナー参加者全体に, グループごとに学んだことを発 表しました.

本の紹介についてはこちら

講 師

講義の紹介

橋本義武先生(東京都市大学)「正20面体と5次方程式」( 8 月 24 日)

概要

「5次以上の一般の代数方程式は,四則演算とべき根によって解くことができない」という有名な定理があるが,「べき根によって」というところをうまく変えれば5次方程式を解くことができる.それは,方程式の話から離れて,正20面体の対称性に目を向けることによってなされる.

講義は,(1)正多面体とその対称性 (2)2,3,4次方程式の解法と根の置換(3)正20面体方程式と5次方程式 の順に進める.

砂田利一先生(明治大学)「数学と予定調和」( 8 月 25 日)

概要

  1. 最小原理と幾何学
    ミクロからマクロまで,世界の形を決める原理が「最小原理」とよばれるもので す.学校で学ぶ数学の中にも,この最小原理が登場します.いくつかの簡単な例を 扱いながら,「最小原理」の歴史とその有効性を解説します.
  2. 結晶の数学
    ミクロの世界で「最小原理」を適用すると,美しい結晶構造を見出すことができま す.この美しさは,結晶構造の「対称性」に根ざしています.ここでは,グラフ理 論と群論に関連させて「結晶の対称性」について解説します.
  3. ダイヤモンドの数学的双子
    結晶の中でもダイヤモンドの結晶構造は,大変大きな対称性を持っています.これ と似た対称性を持つ結晶構造が存在することが最近分かりました.このダイヤモン ドの「双子」について解説します.

伊藤由佳理先生(名古屋大学)「代数学と幾何学の出会い」( 8 月 27 日)

概要

代数学と幾何学は、一見独立した分野のようですが、様々なところで関わっています。 たとえば、群という概念は、幾何学的な対称性を記述するのに便利な道具です。 また、環という概念と幾何学を結びつけた代数幾何学という分野もあります。 さらに体という概念もまた、幾何学的な問題と関わっています。

この講演では、このような代数学と幾何学の関わりや、2つの世界を結びつける面白い現象を紹介したいと思っています。

最終更新日:2009 年 12 月 06 日
JMO 夏季セミナー運営委員会
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