☆ 第 8 回JMO夏季セミナーの記録 ☆

第 8 回JMO夏季セミナーは, 2008 年 8 月 24 日(日)〜 30 日(土)の 6 泊 7 日で, ヴィラ千ヶ滝(山梨県清里高原)で開催しました. 参加希望者には事前に, 自分が数学に関して研究したもの, 興味をもったことについてのレポートを送っ てもらい, それによって選抜を行いました(2008年度JMO本選表彰者は優先的に参 加することができました. 選抜方式は年によって変わります). 参加した生徒は男子31名, 女子5名の計36 名で, 中学1年生から高校3年生までにわたる幅広い層からの参加が見られました. また, チューターとして17名の大学生・大学院生も参加しました. 当セミナーは 数学オリンピック財団の主催で運営されています.

概 要

午前中に講義(第 3,4,5 日), 午後・夕食後にゼミを行いました. 5日目の夜に は, 親睦を深めるためバーベキューを行いました. また, 1日目の夜には希望者による自由発表があり, 2名の生徒が自分の数学に関 する研究成果について発表してくれました.

ゼミではいくつかのグループに分かれて, それぞれ下記のうち一冊の本を読みす すめました. 最終日にはセミナー参加者全体に, グループごとに学んだことを発 表しました.

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講 師

講義の紹介

山崎隆雄先生(東北大学)「整数と多項式, フェルマー予想とabc予想」( 8 月 26 日)

概要

整数と多項式には多くの共通する性質がある. 和・差・積が定義される (しかし商は必ずしも定義されない)ということを出発点として, 約数・倍数・素数・素因数分解などの基本概念が平行した方法で 扱えることが顕著である. そこで, 整数論の有名問題, 特にフェルマー予想を取り上げて, その多項式に対する類似を考える.

講義では, この問題に対して「abc定理」を経由した解法を解説する. この「abc定理」は多項式に対する定理であるが, その整数における 類似を考えると, これがabc予想という未解決問題にたどり着く. 最後にその周辺の話題を紹介する.

徳永浩雄先生(首都大学東京)「多項式と割り算の順序」( 8 月 27 日)

概要

今回の話では, 「順序」ということにこだわることから始まります.整数の大小関係は, 「順序関係」のひとつで自然ですが, それ以外の日常生活等に現れる「順序関係」は 「人工的」な香りのするものが多いように見えます. いろいろなことを整理し, 順序を つけて考えるのは, 人間の習性かもしれません.

講義では, 多項式の割り算と順序に 関する話を少しばかりした後, 2変数以上の多項式でも, 「割り算」を定義することが 可能になることをみてゆきます. 2変数以上の多項式の割り算の話は計算機代数等で 中心的な役割を果たすグレブナ基底へとつながってゆきます.

小谷元子先生(東北大学)「宇宙の地図を描く」( 8 月 28 日)

概要

地球を旅行できなかった昔, 人々は知恵をこらして直接に踏査できない 場所の地図を描き, また地球の大きさを測ることができました. 正確な 地図を描く工夫のなかで, 地球が「曲がっている」ことを理解するため に「曲率」という概念が産まれました.

この講義では, 曲率をめぐって 幾何学=geometry=土地を測る学問とはなにかを考えます. 人類 は今, 未踏である宇宙の地図を描こうとしています. 我々は, 宇宙の地 図を描けるでしょうか?

最終更新日:2008 年 12 月 18 日
JMO 夏季セミナー運営委員会
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