第 2 回御殿場セミナーは,平成 14 年 8 月 24 日(土)〜28 日(水)の 4 泊 5 日で,国立中央青年の家(静岡県御殿場市)で開催しました.全国から 25 名の高校生・中学生が参加しました.
午前中に講義(第 2〜4 日), 午後は自由時間で, 夕食後にゼミを行いました.
セミナーではいくつかのグループに分かれて,それぞれ下記のうち一冊の本を読みすすめました.最終日には他のグループの人に,学んだことを発表しました.
伊藤 淳,小林 佑輔,斎藤 新悟,條 秀彰,土岡 俊介,河村 彰星.
多項式の零点として表される集合を代数多様体といいます.代数多様体の研究には様々なアプローチがありますが,今回は数論的な手法を紹介したいと思います.
具体的には,方程式
x2+y2=1
x3+y3=1
を題材とします.これらは整数係数の方程式ですが,どの範囲で解を考えるかで状況が異なってきます.
まず,実数の範囲で考えてみると,これは次のような図形を表しています.
特に,1 つ目の方程式の解全体は円を表しているのが分かりますね.
次に,複素数の範囲で考えてみるとどうでしょうか.この場合が代数幾何の主要な関心となるのですが,次元が高いため想像が難しいかもしれません.セミナーに来る前にぜひいろいろ考えてみてください.
最後に,p を素数とし,mod p での解を考えてみることもできます.これは上の 2 つの方程式が整数係数だからできることであり,解が有限個になるところが特徴です.
今回の講義では,2 番目の立場と 3 番目の立場の密接なつながりを解説したいと思います.解が有限個しかないような方程式をいくつか考え,それらの解の個数という情報を束ねることで,複素数の範囲での解の集合という「形を持った」図形の幾何学的性質が分かるのです.これは真に驚くべきことだとは思いませんか?
みなさんも光の速度を超えることは出来ないという話を聞いたことがあるでしょう.しかし,たとえば,光速の 3 分の 2 の速度で動く電車から光速の 3 分の 2 の速度で弾丸を打ち出したら,地面から見ている人には,その弾丸は光速を超えてしまうのではないでしょうか.
アインシュタインが見出した特殊相対性理論は,光速に近い速度で運動した場合に世の中がどうなるかを記述する理論です.誰から見ても光速は一定である,という原則から始めれば,動いている時計の「遅れ」や動いているものさしの「短縮」が自然に導かれます.今回の講義では,「遅れ」や「短縮」にかぎ括弧をつけた理由を皆さんに判ってもらえるところまで進めればと思っています.そうすれば,いわゆる双子のパラドックスもパラドックスに思えなくなることでしょう.
時間が許せば,天球は自然に複素平面に無限遠点を付け加えたものだと思え,観測者を変えると,天球は一次分数変換で移り変わるという話もしたいと思います.
C× を 0 でない複素数全体のなす乗法群とする.T を C× の幾つかのコピーの直積群とする.このような T は split torus と言われる.トーラスといってもドーナツ型をしてないがこれには歴史的な事情がある(楕円曲線が楕円でないのと同じような話.むしろこっちの方がドーナツ型をしている).
split torus は単なる群ではなく複素数体上定義された代数多様体の構造を持っている.このようなものを(複素)代数群という.split torus は代数群の中でももっとも基本的なものといえる.
トーリック多様体というのはこの split torus と密接な関連のある代数多様体のクラスであり,1970 年代初頭に独立に幾つかのグループによって基礎が整備された.射影空間や基本的な特異点解消である blow up などもトーリック多様体の例になっている.著しい点は「扇」というユークリッド空間における具体的な図形によってトーリック多様体が記述されてしまうことである.これによってトーリック多様体は具体的にいじれるようになる.そこがおもしろいところである.トーリック多様体自体重要であると同時に,抽象な代数幾何の一般論を例を通して理解しようとするさい役にたつと思う.
ここまでは非常に基本的な事,あまり詳しくはやらない,参加者は出来るだけ予習してきて欲しい.どんな代数の教科書にも載っている事だが例えば堀田良之『代数入門』(裳華房)だったら第 1 章の内容.
ここいらは上野健爾『岩波講座 現代数学の基礎 代数幾何 1』だったらやはり大体第 1 章の内容.層とかを取り上げるのは時間的に無理なので代数多様体の定義はあまりきちんとはできない.
2 次元の場合に限定して話すつもり.参考書としては
日本語の本なら,